2021年9月30日
横綱白鵬が引退しました。本来なら惜しまれて引退し、今後の大相撲はどうなる?次の担い手は?みたいな報道になるのですが、どうもいままでとは違う、ただお疲れ様でしたという内容よりは少し物言いがついたような報道が多かったように思います。
まず白鵬のすごいところは何だったのでしょうか?貴乃花や千代の富士よりも、そしてなによりその昔、子供が好きなものベスト3に名を連ねた、巨人大鵬たまごやきでお馴染みの(若い方には全く馴染みはありませんね、すいません。ちなみに私は二代目、元大関栃東と同い年です(^_^;))あの名横綱大鵬をはるかに超える通算勝利数1000以上、横綱在位期間14年、優勝回数45回どれをとっても一番で、今後白鵬の記録を超える横綱が現れないのではないかと思われるくらい非の打ち所がない成績だったのです。
それなのに、振り返ると引退に近づくにつれ白鵬に批判的な報道が多かったのはなぜでしょうか?報道の中で多かったのは相撲の取り口や言動、いわゆる横綱としての『品格』についてでした。
では品格って何でしょうか?品格とはその人にそなわっている気高さや上品さのことです。その品格を保持することは人々から尊敬あるいは信用を受けるとされます。ただし、表向きに品格の維持に努めたとしてもそれに相応しい行いや気配りも備えていなければ評価を受けず、人徳が良くても他者から評価されなければ品格ありとみられない場合もあるそうです。
それでは白鵬の場合はなにがいけなかったのでしょうか?
よく言われているのは勝ちにこだわるあまり、横綱として本来はすべての挑戦者に対して受けて立つ立場でありながら、立ち合いでの変化や、エルボーまがいの勝ちあげや張り手、既に尻がついた相手へのダメ押しなどがあげられます。また基本的には立ち合いの成立不成立や物言いは行司や審判団の親方衆のみ認められているものですが、納得できないと土俵際で物言いを自らつけたり、優勝インタビューでは会場を巻き込んでの万歳三唱や三本締めなどのパフォーマンスがあげられています。
でも一人のプロスポーツ選手としてのみ見ればいかかでしょうか?プロは結果がすべてのはずですから、いかなる手段を用いても勝ちにこだわるべきでしょうし、自身のプロスポーツを盛り上げるためには試合や観客を盛り上げなければなりませんから大した問題ではないのではないでしょうか?実際白鵬は震災があればすぐに慰問を行ったり、相撲人口のすそ野を広げるために毎年自費で世界中の子供たちを集めての白鵬杯を開催したりと相撲界の発展につくしてきました。
実は白鵬は横綱になってすぐに朝青龍が引退に追い込まれ一人横綱となり頑張っていました。よくそのころのインタビューでは詳しく解説はしませんが、『後の先』といって横綱らしく常に受けて立つ姿勢で相撲にとりくみ、極めようとしていました。立ち居振る舞いも立派でとくに朝青龍との比較もあって往年のファンも白鵬はものが違うと絶賛されていたのでした。ところが、そんな白鵬も色々分析されていますが、年齢による衰えや強すぎるが故に勢いのある若手力士の挑戦に少しヒールのような存在になっていったことに対し、色々本人が試行錯誤した結果、横綱の地位を守るため勝つことにこだわるようになったと言われています。
引退会見で横綱とは?との質問に対して『土俵の上では手を抜くことなく、鬼になって勝ちに行くことこそが横綱相撲だと考えていました。その一方で周りのみなさんや横綱審議委員会の先生などの横綱相撲を目指したこともありましたが、最終的にその期待に応えることができなかったかもしれません』と語っていました。胸の内の葛藤が伝わる言葉でした。
1000年以上の歴史があるとされる大相撲、もともとは『神事』と『興行』、近代では『スポーツ』という3つの側面を時代に合わして微妙にバランスを変えながら成り立ってきました。史上最強の横綱白鵬が残したものは歴史に残る偉業に加えて大相撲とは何か?どうあるべきか?とういう根本への問いかけとなったと思います。
全く知らない国日本に身一つでやってきて頑張った白鵬は本当にお疲れ様でした。これからは親方として後輩の育成にあたります。この日本独特のスポーツ、そういえば国技(私も小学生の時は地域(兵庫県)の伝統にのっとってふんどし一丁で近所の氏神様の土俵で相撲をとってましたね。。。。今も続いているのでしょうか?)でしたが、急速に変わり続ける世の中のなかで伝統文化とスポーツのバランスをどのように整え、今後どう進んでいくのか?白鵬の指導をうけた力士達がどのように活躍していくのか、期待と不安を交えながら、一ファンとして見守っていきたいと思います。
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