TCHという言葉をご存知でしょうか?Tooth Contacting Habit(歯列接触癖)の略で、上下の歯を常に持続的に接触させる癖のことです。噛みしめ・呑気(どんき)症候群という名前でも知られています。
要は食いしばりのように噛みしめる時間が長いことでおこる、体の不具合のことを示しています。(体です。口だけの問題ではないのです!)なんだか噛むことや食いしばることが、いけないことのように聞こえますね。食いしばることは決して異常ではないのですが、実は人はリラックスしている状態のとき、歯は接触しておらず、会話や食事の際に接触する時間を含めても1日20分程度が正常であると言われているのです。ところが、力仕事や緊張を強いる作業や考え事、集中力を高めたいときなど状況により、人はすぐに食いしばります。それが段々癖となり、先ほどの時間を優に超える状態が日々続くと、それは『過ぎる』状態となるわけです。
噛むことは、歯どうしがただ動くのではありません。歯を支えている顎、その顎を支えて動かしている筋肉、それら筋肉に連動する筋肉などなど、全身が関わる運動です。噛みしめは全身に影響を及ぼし得るのですが、顎、顔面領域に限ってみても、歯の磨り減りや、歯の脇の楔状の穴、歯茎のやせ、知覚過敏、顎関節症などに関わっていると言われています。癖や症候群とは人が気がつかないうちに、あるいは気付いていたとしても特に気にせず行っている習慣的な行動のことですから、実はすでに『過ぎる』状態になっているにも関わらず、気が付かないまま過ごしているとか、違和感を持ちながら不定愁訴として片付けてしまっているかもしれません。ちなみに歯科では、無意識の歯の接触を3つに分類しています。クレンチング(強く噛みしめること)、グライディング(ギシギシと横にこすれ合わせること)、タッピング(カチカチと噛み合せること)、まとめてブラキシズムとも呼ばれています。
私たちも顔面や口腔内の状態から疑いを持ち、推測していくことが多いのですが、特に音がしない噛みしめはやはり自覚症状もなく、その疑いのお話をさせていただいても、なかなかご理解いただけないことが多いのも現実です。就寝中などは特にわからないことの方が多いはずですから、まずは日中、ふとした時に歯を接触させていないか、確認してみることをお勧めします。もし、気が付いたとしたら、是非わざと接触させないように心がけてください。そうすることで、無意識下(夜間や就寝中)の接触も軽減していく可能性も出てきます。もちろん、ご自身ではなかなかコントロールできないとか、実際にどうなのか不安であれば、状況に応じて指導やマウスピースの作成を行っておりますので、思い当たることが少しでもあれば、まずは相談していただきたいです。
最後にもう一度
あっ!今、食いしばっていませんか?
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